共同研究ガイドライン

本ガイドラインは、KAIRO-DS Collaborator Portal を利用して共同研究を始める研究者、とくに異分野連携に不慣れな若手研究者のための実務指針です。
本ポータルは研究者同士の出会いと連絡を支援する場であり、個別の共同研究契約、倫理審査、知的財産、著者順、データ授受の適法性を運営者が代行判断するものではありません。責任は原則として共同研究の当事者および各所属機関に帰属します。
目次
  1. このサイトの使い方(クイックスタート)
  2. 共同研究を始める前に確認すべきこと
  3. 共同研究の具体的な手続きフロー
  4. データ授受の仕組み(必須)
  5. トラブルを防ぐためのコミュニケーション原則
  6. 金銭・知的財産・著者要件の事前合意(重要)
  7. 研究倫理・セキュリティ上の注意
  8. トラブルが起きた場合の対応手順
  9. 若手研究者が陥りがちな落とし穴 TOP 10
  10. 最後に: 規約遵守の確認

1. このサイトの使い方(クイックスタート)

最初に、本ポータルは「研究者検索」「相談」「連絡」を支える基盤であり、研究実施上の法務・倫理・契約手続を自動的に満たす仕組みではないことをご理解ください。使い方を誤ると、出会いは得られても、後のトラブルを自分たちで増やすことになります。最初の設定を丁寧に行うことを強く推奨します。

2. 共同研究を始める前に確認すべきこと

共同研究は、相手と話が合った時点ではまだ始まっていません。本当に始めてよいかどうかは、各所属機関のルール、研究対象、データの性質、資金や成果の扱いを確認して初めて判断できます。

3. 共同研究の具体的な手続きフロー

共同研究は、盛り上がりよりも段取りで成否が決まります。以下の流れに沿って進めると、初期の見落としを大幅に減らせます。各段階で「誰が何を確認するか」を明確にしてください。

  1. 興味のあるテーマについて、まず 研究相談掲示板 で相談するか、既存トピックにコメントしてください。公開範囲でよい論点に限定し、未公開データや秘密情報は出さないでください。
  2. 相手が具体化したら、プロジェクトチャンネルルーム へ参加または招待し、個別調整に移ります。誰が当事者かを明確にし、関係者以外をむやみに増やさないことが重要です。
  3. 初回ミーティング前に最低限合意すべき事項は、研究目的、期待する成果物、各自の役割、想定スケジュール、扱うデータや試料の種類、対外発表の有無です。ここが曖昧なまま会議をすると、会話が盛り上がっても合意は形成されません。
  4. 共同研究契約や秘密保持契約(NDA)が必要かを判断してください。未公開アイデア、未発表データ、企業連携、資金拠出、試料提供、装置利用、知財化可能性がある場合は、早い段階で所属機関の研究推進・法務・知財部門に相談することを強く推奨します。
  5. 倫理審査の必要性を判断してください。人を対象とする研究、個人情報を含むデータ、アンケート、診療情報、ヒト由来試料、動物実験、センシティブ属性を扱う研究では、着手前の確認が不可欠です。
  6. データ授受方法を合意してください(次節参照)。
  7. 中間レビューと定期ミーティングを設定してください。月1回などの定例に加え、重要な節目ごとに進捗、役割、成果物、リスクを見直す運用を強く推奨します。
  8. 成果発表前には事前確認手順を必ず踏んでください。共著者全員の確認、所属機関上の手続、知財化の検討、学会要旨や論文の提出期限、データ公開条件を確認してから提出してください。

4. データ授受の仕組み(必須)

データ授受は、共同研究の中でも最も事故が起こりやすい工程です。本ポータルで知り合った相手とのデータ共有であっても、利便性だけで手段を選んではいけません。責任の所在と追跡可能性を確保できる方法を使うことが必要です。

原則: 研究データの授受には、神戸大学 情報基盤センターのオンラインストレージサービス を必ず利用してください。
https://www.istc.kobe-u.ac.jp/services/StandardService/onlinestorage/

採用する理由

避けるべき手段とその理由

運用ルール

5. トラブルを防ぐためのコミュニケーション原則

異分野共同研究では、能力不足よりもコミュニケーションのズレで失敗することが多くあります。相手が悪いのではなく、前提・用語・時間感覚が違うのが普通だという前提で運用することが重要です。

6. 金銭・知的財産・著者要件の事前合意(重要)

共同研究の紛争は、研究内容そのものより、金銭・知財・著者要件の未整理から起こることが少なくありません。関係が良好なうちに合意しておくことが、相手への不信ではなく、むしろ相手への敬意です。

証拠の残し方

重要事項は 「言った・言わない」にしない ことが原則です。証拠は一つで足りるとは考えず、複数の手段を組み合わせて残してください。

  1. KAIRO-DS のプロジェクトチャンネルで合意確認 を行い、タイムスタンプ付きのログを残してください。
  2. メールでのリプライ確認 を行い、必要に応じて CC を含めて証拠保全してください。
  3. 共有ストレージ上に 合意事項.mdproject-charter.md を置き、当事者全員が承認した日時を記録してください。
  4. 金銭、IP、著者要件のような重要合意は、紙または PDF の覚書として、捺印または電子署名で残す ことを強く推奨します。

7. 研究倫理・セキュリティ上の注意

研究倫理とセキュリティは、共同研究の速度を落とす障害ではなく、研究を守る最低条件です。違反が起きた場合、被害は個人だけでなく、研究室、部局、所属機関、共同研究者全体に及びます。

8. トラブルが起きた場合の対応手順

トラブルが起きたときに重要なのは、感情的に反応することではなく、記録を保全しながら論点を切り分けることです。共同研究の問題は、誤解、手続漏れ、役割不明確、ハラスメント、知財、著者順など性質が異なるため、適切な相談先も異なります。

9. 若手研究者が陥りがちな落とし穴 TOP 10(具体例)

若手研究者は、能力不足ではなく、遠慮、配慮、経験不足のために不利な状態へ入りがちです。以下の落とし穴は非常によく起こります。自分だけは大丈夫と思わず、事前に対策してください。

  1. 「先生に言われたから」と曖昧な合意のままデータ提供してしまう
    防ぐ具体的アクション: データの内容、提供目的、利用範囲、再共有可否、保存期間、削除条件を文書化し、必要な所属機関手続が終わるまで渡さないでください。
  2. 著者順を直前まで議論しない
    防ぐ具体的アクション: 研究開始時に著者候補、Corresponding author、寄与評価の基準を確認し、途中の寄与変化に応じて見直す場を定例的に設けてください。
  3. 学会発表直前に共著者から了承を取り損ねる
    防ぐ具体的アクション: 要旨提出日、抄録締切、スライド確認期限を逆算し、少なくとも数日前ではなく数週間前から確認依頼を出してください。
  4. メールではなく口頭・口約束のみで進める
    防ぐ具体的アクション: 会議後に必ず短い確認文をメールまたはチャットで残し、「本日の合意事項は以下の通りです」と明文化してください。
  5. 個人 Google Drive にデータを置く
    防ぐ具体的アクション: 研究データは神戸大学情報基盤センターのオンラインストレージサービスに限定し、個人クラウドや私物 USB への保存をしないでください。
  6. 異分野の専門用語を「分かったふり」してしまう
    防ぐ具体的アクション: 会議中に用語集を作り、分からない語はその場で確認してください。理解したつもりのまま進める方が、後で大きな不利益になります。
  7. 締切間際の対応依頼で関係が悪化する
    防ぐ具体的アクション: 依頼は早めに行い、相手の繁忙期を確認し、急ぎの場合は理由と必要最小限の確認事項を明示してください。
  8. ハラスメントを我慢してしまう
    防ぐ具体的アクション: 不快な言動、過剰な要求、威圧的な指示があれば記録を残し、一人で抱え込まず、所属機関のハラスメント窓口等へ相談してください。
  9. 自分の貢献度を主張しない
    防ぐ具体的アクション: 実施した解析、実験、執筆、図表作成、資金獲得、データ整備をログ化し、CRediT 等に沿って自分の寄与を可視化してください。
  10. 終了後の権利関係、特に IP を整理していない
    防ぐ具体的アクション: プロジェクト終了時に、データ保存先、試料返却、成果公開、特許検討、再利用条件を確認する「終了チェック」を必ず行ってください。

10. 最後に: 規約遵守の確認

共同研究は、善意だけでは守れません。守るべき手続を守り、合意を残し、分からないことは確認することが、相手を守り、自分を守り、研究を守る最善の方法です。

最終更新日: 2026年4月25日
本ガイドラインは弁護士監修を経たものではなく、必要な場合は法律専門家・所属機関にご相談ください。