共同研究ガイドライン
1. このサイトの使い方(クイックスタート)
最初に、本ポータルは「研究者検索」「相談」「連絡」を支える基盤であり、研究実施上の法務・倫理・契約手続を自動的に満たす仕組みではないことをご理解ください。使い方を誤ると、出会いは得られても、後のトラブルを自分たちで増やすことになります。最初の設定を丁寧に行うことを強く推奨します。
- ログインは Google 認証 で行い、その後に 管理者承認 を経て利用可能となります。Google 認証だけで研究参加資格や所属確認が完了したことにはなりません。承認前に得た情報を用いて独断で共同研究を進めることは避けてください。
- プロフィール登録は必須に近い重要作業です。氏名、所属、職位、連絡先、自己紹介、研究タグを具体的に記入してください。プロフィールが不十分だと、相手が専門性・責任範囲・連絡可能性を判断できず、ミスマッチや無用な警戒を招きます。
- 氏名と所属は、責任の所在を明確にするために正確に記載してください。略称のみ、研究室名のみ、私的な連絡先のみといった登録は避けてください。
- 自己紹介には、研究対象、使える手法、提供できる資源、現在関心のある共同研究テーマ、対応可能な頻度を記すと有効です。異分野共同研究では 「何ができるか」だけでなく「何はできないか」も書く 方が誤解を防げます。
- 研究タグは検索性を高めるだけでなく、相手が初回相談前に論点を整理する助けになります。広すぎるタグだけでなく、具体的な手法・データ種・対象領域も含めてください。
- メンバータブは研究者を探し、専門性と関心を確認する場所です。声をかける前に最低限の適合性を確認してください。
- 研究相談掲示板は、テーマ探索、相談募集、アイデアの壁打ち、公開してよい範囲の問いかけに使ってください。未公開データ、特許化可能性の高い着想、個人情報、契約前提の詳細条件は書かないでください。
- プロジェクトチャンネルは、具体的な相手が決まり、個別調整に進む段階で使ってください。日程調整、役割分担、合意事項の確認には有効ですが、機微な未公開データそのものを貼り付ける場所ではありません。
- @メンションは、必要な相手を明示的に呼び、誰に確認を依頼したのかをログ上で明確にするために使ってください。異分野共同研究では「誰に投げたつもりか」の齟齬が起こりやすいため、重要な確認事項では積極的に用いることを推奨します。
- 利用規約(同意書)への同意は必須です。利用規約への同意は本ガイドラインの遵守と一体であり、「規約には同意したがガイドラインは読んでいない」という主張は免責理由になりません。
2. 共同研究を始める前に確認すべきこと
共同研究は、相手と話が合った時点ではまだ始まっていません。本当に始めてよいかどうかは、各所属機関のルール、研究対象、データの性質、資金や成果の扱いを確認して初めて判断できます。
- まず、自分の所属機関のルールを確認してください。少なくとも、共同研究契約、利益相反(COI)、輸出管理、研究倫理審査、個人情報保護、データ管理計画の要否は確認が必要です。
- 相手研究者の所属機関のルールも必ず確認してください。自分の機関で問題がなくても、相手側で契約、倫理審査、持ち出し制限、秘密管理の手続が必要な場合があります。
- 異分野共同研究では、「相手が当然やっているはず」という思い込みが最も危険です。医学、工学、情報、社会科学、人文学では、必要な審査や記録の作法が大きく異なります。
- 共同研究の 目的、範囲、期間 は、開始前に短くても文書化してください。何を明らかにしたいのか、何をしないのか、いつまでに何を目指すのかが曖昧なまま進めると、途中で期待値が分裂します。
- 文書化する内容としては、研究課題名、目的、対象データ・試料、参加者、役割分担、期間、想定成果、費用負担、知財や著者の考え方、連絡方法が最低限必要です。
- 「とりあえず始めて、後で整理する」は、共同研究で最も多い紛争原因の一つです。最初の数週間で整理を怠ると、後から人間関係に配慮して論点を言い出せなくなります。
- ポータル上で知り合ったことは、契約や倫理上の確認を省略してよい理由にはなりません。KAIRO-DS、CMDS、神戸大学は、個別案件の適法性や妥当性を保証しません。
3. 共同研究の具体的な手続きフロー
共同研究は、盛り上がりよりも段取りで成否が決まります。以下の流れに沿って進めると、初期の見落としを大幅に減らせます。各段階で「誰が何を確認するか」を明確にしてください。
- 興味のあるテーマについて、まず 研究相談掲示板 で相談するか、既存トピックにコメントしてください。公開範囲でよい論点に限定し、未公開データや秘密情報は出さないでください。
- 相手が具体化したら、プロジェクトチャンネルルーム へ参加または招待し、個別調整に移ります。誰が当事者かを明確にし、関係者以外をむやみに増やさないことが重要です。
- 初回ミーティング前に最低限合意すべき事項は、研究目的、期待する成果物、各自の役割、想定スケジュール、扱うデータや試料の種類、対外発表の有無です。ここが曖昧なまま会議をすると、会話が盛り上がっても合意は形成されません。
- 共同研究契約や秘密保持契約(NDA)が必要かを判断してください。未公開アイデア、未発表データ、企業連携、資金拠出、試料提供、装置利用、知財化可能性がある場合は、早い段階で所属機関の研究推進・法務・知財部門に相談することを強く推奨します。
- 倫理審査の必要性を判断してください。人を対象とする研究、個人情報を含むデータ、アンケート、診療情報、ヒト由来試料、動物実験、センシティブ属性を扱う研究では、着手前の確認が不可欠です。
- データ授受方法を合意してください(次節参照)。
- 中間レビューと定期ミーティングを設定してください。月1回などの定例に加え、重要な節目ごとに進捗、役割、成果物、リスクを見直す運用を強く推奨します。
- 成果発表前には事前確認手順を必ず踏んでください。共著者全員の確認、所属機関上の手続、知財化の検討、学会要旨や論文の提出期限、データ公開条件を確認してから提出してください。
4. データ授受の仕組み(必須)
データ授受は、共同研究の中でも最も事故が起こりやすい工程です。本ポータルで知り合った相手とのデータ共有であっても、利便性だけで手段を選んではいけません。責任の所在と追跡可能性を確保できる方法を使うことが必要です。
https://www.istc.kobe-u.ac.jp/services/StandardService/onlinestorage/
採用する理由
- 神戸大学の認証基盤と連携した管理の下で運用でき、誰が管理主体であるかが明確で、第三者アクセスのリスクを下げやすい。
- 大学管理のストレージを利用することで、共有設定やアクセス記録の追跡可能性を確保しやすくなる。後から「誰に渡したか分からない」「いつ共有したか証拠がない」という状態を避けられる。
- 参考: 認証基盤の説明は神戸大学情報基盤センターの シングルサインオン基盤 Knossos を確認してください。
避けるべき手段とその理由
- Dropbox / Google Drive 等の個人 SaaS アカウント: 情報漏洩時の責任所在の不明確化、所属機関規程違反、保存先が国外に及ぶことによる法的・倫理的問題などのリスクがある。
- 個人 USB / 私物 PC のローカル保存 / 個人クラウド: 所属機関の情報セキュリティポリシーに違反するおそれ。便利であっても、独断で使わないでください。
運用ルール
- KAIRO-DS のチャット機能やコメント機能には、機微な未公開データ、個人情報、未出願の発明情報、契約上秘匿すべき情報を直接貼らないでください。
- 大容量データや機微性の高いデータは、必ず上記オンラインストレージで授受し、チャットには「保存先フォルダ名」「アクセス権限を付与した相手」「閲覧手順」「確認期限」のみを記載してください。
- フォルダには、プロジェクト名、日付、版、責任者が分かる命名を行ってください。例:
2026-04_projectA_rawdata_v1 - データ授受の責任者を一人決めてください。誰でもアップロードできる状態は便利ですが、事故時に説明責任を果たせません。
5. トラブルを防ぐためのコミュニケーション原則
異分野共同研究では、能力不足よりもコミュニケーションのズレで失敗することが多くあります。相手が悪いのではなく、前提・用語・時間感覚が違うのが普通だという前提で運用することが重要です。
- 議事録を残してください。最低限「いつ」「誰が参加し」「何を決め」「何が未決だったか」を記録し、参加者に共有してください。
- 議事録には決定事項だけでなく、担当者と期限を書いてください。決めたつもりで誰も動かない状態を防げます。
- 不在期間や担当範囲は最初に明確化してください。授業期、学会出張、実験集中期間、査読対応時期など、応答しにくい時期は先に共有しておく方が誠実です。
- 多忙時の連絡遅延をある程度許容する文化を持ってください。即レスを前提にすると、若手ほど無理をして関係が悪化します。
- 一方で、長期間応答できない場合は、短くても「確認中です」「何日までに返します」と返すことを推奨します。沈黙は相手の不信感を最も強めます。
- 異分野間では、前提知識、用語、妥当な証拠水準、論文化までの速度感が異なります。分からない言葉はその場で確認し、「分かったふり」をしないでください。
- 心理的安全性を確保してください。質問、反論、懸念の表明を歓迎する姿勢がない共同研究は、早晩どこかで破綻します。
- 「誰かが言いにくいことを我慢している状態」は、短期的には静かでも、長期的には最も高コストです。違和感は早めに言語化してください。
6. 金銭・知的財産・著者要件の事前合意(重要)
共同研究の紛争は、研究内容そのものより、金銭・知財・著者要件の未整理から起こることが少なくありません。関係が良好なうちに合意しておくことが、相手への不信ではなく、むしろ相手への敬意です。
- 金銭面については、開始時点で文書化することを強く推奨します。科研費等の予算配分、謝金、装置使用料、サンプル作製費、外注費、旅費、論文掲載料の負担者を明確にしてください。
- 「今回は少額だから後で」は危険です。少額の立替や曖昧な負担が積み重なると、後で貢献評価や人間関係に影響します。
- 著者順、Corresponding author、寄与度の評価基準は事前に合意してください。分野差を踏まえつつ、CRediT taxonomy や ICMJE 基準 など、外部に説明可能な枠組みを参照することを推奨します。
- 事前合意は、著者を固定するためではなく、後で変更が必要になったときに説明できる基準を持つために重要です。実際の寄与に応じて見直す前提を明記しておくとよいでしょう。
- 特許化可能性のある成果が出る場合は、公開前に必ず所属機関の知財担当へ相談してください。出願権、共有持分、実施権、公開タイミングは、当事者間の口頭合意で済ませないでください。
- 学位論文・博士論文への利用、学会発表の優先順、プレプリント公開の可否も、事前に確認してください。学生の学位要件と共同研究の公開戦略が衝突することは珍しくありません。
- 試料や材料の移転を伴う場合は、MTA(Material Transfer Agreement)の必要性を検討してください。
- 共同研究契約書、NDA、MTA の必要性判断は、当事者だけで抱え込まず、各所属機関の担当部署に確認してください。KAIRO-DS や CMDS は契約当事者でも仲裁者でもありません。
証拠の残し方
重要事項は 「言った・言わない」にしない ことが原則です。証拠は一つで足りるとは考えず、複数の手段を組み合わせて残してください。
- KAIRO-DS のプロジェクトチャンネルで合意確認 を行い、タイムスタンプ付きのログを残してください。
- メールでのリプライ確認 を行い、必要に応じて CC を含めて証拠保全してください。
- 共有ストレージ上に
合意事項.mdやproject-charter.mdを置き、当事者全員が承認した日時を記録してください。 - 金銭、IP、著者要件のような重要合意は、紙または PDF の覚書として、捺印または電子署名で残す ことを強く推奨します。
7. 研究倫理・セキュリティ上の注意
研究倫理とセキュリティは、共同研究の速度を落とす障害ではなく、研究を守る最低条件です。違反が起きた場合、被害は個人だけでなく、研究室、部局、所属機関、共同研究者全体に及びます。
- 個人情報を含むデータを扱う場合は、匿名化や仮名化の程度、第三者提供の可否、保管期間、アクセス権限、廃棄方法を事前に確認してください。
- 個人情報や要配慮個人情報を扱う研究では、研究倫理審査や所属機関の個人情報保護手続が必要となることがあります。判断に迷う場合は、着手前に必ず確認してください。
- 研究不正の防止は全員の責任です。捏造、改ざん、盗用だけでなく、不適切な画像処理、再現不能な解析、出所不明データの混入にも注意してください。
- 解析コード、前処理手順、使用データの版、除外基準を記録してください。再現性の記録がない共同研究は、善意であっても疑義に弱くなります。
- 利益相反(COI)は自己点検してください。企業との関係、兼業、受託研究、株式保有、謝金受領などが、研究解釈に影響する可能性があれば開示が必要な場合があります。
- 輸出管理に該当しうる技術、プログラム、装置情報、機微な研究データは、国外提供や外国籍研究者との共有を含めて確認してください。相手が善意であることと、制度上問題がないことは別です。
- セキュリティ事故が起きたと疑われる場合は、隠さず、ただちに所属機関の情報セキュリティ窓口に相談してください。初動の遅れが被害を拡大させます。
8. トラブルが起きた場合の対応手順
トラブルが起きたときに重要なのは、感情的に反応することではなく、記録を保全しながら論点を切り分けることです。共同研究の問題は、誤解、手続漏れ、役割不明確、ハラスメント、知財、著者順など性質が異なるため、適切な相談先も異なります。
- まず当事者間で、事実関係を冷静に確認してください。いつ、誰が、何を、どの媒体で合意したのかを、ログやメールに基づいて整理します。
- 次に、問題の種類を切り分けてください。契約、倫理、著者要件、ハラスメント、情報漏洩、研究不正では、対応窓口が異なります。
- 当事者間で解決が難しい場合は、所属機関の窓口に相談してください。コンプライアンス窓口、研究公正委員会、ハラスメント窓口、知財担当、研究推進部門、情報セキュリティ窓口などが候補です。
- KAIRO-DS / CMDS は、個別紛争の仲裁機関ではありません。相談窓口を案内することはあっても、法的判断、事実認定、責任配分の決定を行う立場ではありません。
- 規約違反やセキュリティ上の重大な問題が疑われる場合には、運営者が利用状況の確認、警告、投稿削除、アカウント停止等の措置を講じる可能性があります。
- ただし、そのような措置は共同研究上の損害や紛争を代わって解決するものではありません。個別の損害や権利関係についての責任は、原則として当事者に帰属します。
9. 若手研究者が陥りがちな落とし穴 TOP 10(具体例)
若手研究者は、能力不足ではなく、遠慮、配慮、経験不足のために不利な状態へ入りがちです。以下の落とし穴は非常によく起こります。自分だけは大丈夫と思わず、事前に対策してください。
- 「先生に言われたから」と曖昧な合意のままデータ提供してしまう
防ぐ具体的アクション: データの内容、提供目的、利用範囲、再共有可否、保存期間、削除条件を文書化し、必要な所属機関手続が終わるまで渡さないでください。 - 著者順を直前まで議論しない
防ぐ具体的アクション: 研究開始時に著者候補、Corresponding author、寄与評価の基準を確認し、途中の寄与変化に応じて見直す場を定例的に設けてください。 - 学会発表直前に共著者から了承を取り損ねる
防ぐ具体的アクション: 要旨提出日、抄録締切、スライド確認期限を逆算し、少なくとも数日前ではなく数週間前から確認依頼を出してください。 - メールではなく口頭・口約束のみで進める
防ぐ具体的アクション: 会議後に必ず短い確認文をメールまたはチャットで残し、「本日の合意事項は以下の通りです」と明文化してください。 - 個人 Google Drive にデータを置く
防ぐ具体的アクション: 研究データは神戸大学情報基盤センターのオンラインストレージサービスに限定し、個人クラウドや私物 USB への保存をしないでください。 - 異分野の専門用語を「分かったふり」してしまう
防ぐ具体的アクション: 会議中に用語集を作り、分からない語はその場で確認してください。理解したつもりのまま進める方が、後で大きな不利益になります。 - 締切間際の対応依頼で関係が悪化する
防ぐ具体的アクション: 依頼は早めに行い、相手の繁忙期を確認し、急ぎの場合は理由と必要最小限の確認事項を明示してください。 - ハラスメントを我慢してしまう
防ぐ具体的アクション: 不快な言動、過剰な要求、威圧的な指示があれば記録を残し、一人で抱え込まず、所属機関のハラスメント窓口等へ相談してください。 - 自分の貢献度を主張しない
防ぐ具体的アクション: 実施した解析、実験、執筆、図表作成、資金獲得、データ整備をログ化し、CRediT 等に沿って自分の寄与を可視化してください。 - 終了後の権利関係、特に IP を整理していない
防ぐ具体的アクション: プロジェクト終了時に、データ保存先、試料返却、成果公開、特許検討、再利用条件を確認する「終了チェック」を必ず行ってください。
10. 最後に: 規約遵守の確認
共同研究は、善意だけでは守れません。守るべき手続を守り、合意を残し、分からないことは確認することが、相手を守り、自分を守り、研究を守る最善の方法です。
- 本ガイドラインは、KAIRO-DS Collaborator Portal の利用規約(同意書) と一体のものとして遵守してください。
- 利用規約や本ガイドラインへの同意は、必要に応じて再度求められる場合があります。更新後に利用を継続する場合も、内容確認の責任は利用者本人にあります。
- ポータル上での活動は、共同研究の便宜を与えるものであって、当事者の法的・倫理的・組織的責任を軽減するものではありません。
- 個別事案については、必ず弁護士、所属機関のコンプライアンス窓口、研究推進部門、知財担当、倫理審査窓口等に確認してください。
- 運営者、神戸大学、CMDS、KAIRO-DS は、共同研究紛争の当事者ではなく、個別案件の結果責任を負うものではありません。未確認のまま研究を進めた場合の責任は、原則として当事者に帰属します。